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月刊タイガース(今月号) > 半世紀回虎録バックナンバー第十一回
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第十一回 「思い返す昔日の日々 手に入れたものと失ったもの」 [07.07月号掲載]

  本社の広告塔から、いち企業へ―。球団の運営方針自体が大きく変わっていた。売り上げ重視の経営。今と昔。サービス業には違いないが、仕事内容が変わって当然。株式会社・阪神タイガース。復帰後、初出勤の日の球団事務所。各部へ挨拶して回った。頭を下げながら気付いたのが職員の数。かなり多い。ふと、頭をよぎったのは自分が新入団したころ、旧電鉄本社の四階。果たして10人いただろうか。事務所を見渡した。60名はいる。若い女性もいる。一般企業と何ら変わりない。今、プロ野球界。金儲けの基本である観客動員にあの手、この手。テレビ放映料。球場、一部球団のチーム名義貸し。ユニホーム。ヘルメットへの広告。グッズ販売等々。完璧に変身したね。
 私の選手時代を思い出してみた。甲子園球場の選手ロッカー。冷暖房装置はない。自然のまま。ユニホームの洗濯は三連戦が終わってから。前日の試合でスライディング、あるいはダイビングキャッチした選手は、ユニホームに泥がついたまま次の日の試合に。まさに汗と泥にまみれたユニホームである。真夏でも同じパターン。暑い、クサイは当たり前。いい時代になったね。今、ロッカーの冷暖房はバッチリ。広報室、マネジャー室をはじめ全室に完備。負け試合が続いたときの雰囲気はいただけないが、勝ったり、負けたりの繰り返しであれば、すべて快適。衣類も、ユニホームなど、アンダーシャツ、ソックス等汚れ物は毎試合後洗濯屋さんへ。あくる日の昼過ぎにはできあがってロッカーへ。常に清潔なユニホームでプレーしている。ただし、この洗濯代、真夜中の至急、ちょっと値が張るようだ。

入団当初の練習風景
(手前から)小山、村山、渡辺省・・・、昭和の大投手もそんな時代を過ごしてきた。(筆者は奥から2人目)

 遠征―。東京、名古屋、広島の三ヶ所。その当時、大洋ホエールズが川崎球場を本拠地にしていたが、今ほど交通量はない。東京の常宿からバスで通っていた。国鉄(JR)の大阪〜東京間。利用列車は特急ツバメ、ハト。入団した当初の所要時間が八時間。何年後かには六時間に。名古屋へは近鉄特急を利用。当時始発駅だった上六(上本町六丁目)からの乗車。広島へは特急カモメ。帰りは夜行で帰阪していた。翌日、移動日がありながら、なぜ夜行だったのかはいまだに知らないが、あのころの特急、今のグリーン車が二等車。そういえば、入団した年の我々は三等車。向かい合わせの四人掛け。長時間乗っているとオシリが痛くなる。それでも特急に乗れることがうれしくて、うきうきしていた記憶がある。純粋だったね。
 新幹線の開通で、所要時間が大幅に短縮。大阪〜東京間、三時間十分。現在に至っては二時間半。今では当たり前になったが、何と速く感じたことか。この新幹線の開通で徐々に消滅していったのが、ダブルヘッダー。以前は移動時間の問題があって、月、金曜日が移動日。週六試合を開催するために、日曜日がダブルヘッダーになっていた。便利になったものだ。当日移動してゲームができる。まさに、夢の超特急。技術の進歩。我々凡人はただ驚くばかりだが、中には、この進歩をあまり良く思っていない人がいる。勤め人、出張先でちょっと羽根をのばすのを楽しみにしていたのが、何と日帰り出張。なんぼ速いからといって、仕事をしてその日に帰るのはシンドイ。楽しみがない。味も素っ気もない時世になりつつもある。
 他にも、幸せになったのは遠征時の荷物。大きなボストンバッグに、グラブ、スパイク、ユニホーム、アンダーシャツ等、野球用具一式と自分の衣類を詰め込んで持ち歩いていたのが我々の選手時代。私物以外にも、若手投手は練習ボールと、ピッチングボール。打者が、コーチの人数分のノックバットと、マスコットバット。捕手は、プロテクター、レガースなど。キャッチャー用具一式。これが重たい。おまけに、到着駅から直接夜の町へ消える先輩からは「部屋へ放り込んどいて」と荷物を渡される。いくつかのバッグをかついでタクシー乗り場へ。もう汗ダク。やっと旅館に着いてもクーラーはない。現在は野球道具はすべて球団提供の荷物車が運んでくれる。
 駅から貸し切りバスでホテルに到着したら、荷物はすでに部屋に入っている。もう、至れり、尽くせり。立派なシティーホテル。一人一部屋。プライバシーは守られている。二人部屋から七、八人部屋まで。雑魚寝だったのは昔の話。宿舎での娯楽といえばマージャンしかない。今みたいに娯楽室などない。あっちの部屋で『ジャラ、ジャラ』とパイの音。時には徹夜になる。マージャンをしない人がこの部屋の住人だったら大変。やかましいパイの音を子守唄代わりに寝るしかない。それでも、各選手が自分の部屋でパソコンなどでゲームをしている今より、選手同士のふれ合いはあったように思う。
 選手生活の終盤。各チームにトレーニングコーチ、バッティング投手が出現した。そして、スコアラー、広報担当などが次々と誕生。年俸も大台が百万円台から、いまや一億台に。お金を話題にして思い出したのが、野球用具等にまつわるエピソード。現在は各スポーツメーカーとアドバイザリー契約を結び、用具はすべて支給されている選手が多い。その点、昔は自分で購入していたため、給料日になると運動具屋さん、洋服屋さんの借金取りが・・・。若かったね。つい、いたずら心が。スキを見てソッと帰ったりしたことを思い出すと、本当、なつかしい。この原稿執筆中、時々「オレも、もっと遅く生まれてくれば」ならぬ事が頭に浮かんだが、時の流れは速い。一日は、あっという間に通り過ぎて行く。我々、ついていくのが精一杯。新幹線から、そろそろリニアモーターカーの時かな。さて、タイガース、じっくり振り返ってみる。

                            
                      
 

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